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企業解説

企業解説 2026/07/03

First Light Fusion 徹底解説——“弾丸”方式から技術ライセンスへ舵を切った英国の異端児

First Light Fusionは、オックスフォード大学発の「プロジェクタイル(弾丸)慣性方式」という異色のアプローチで核融合業界に参入した英国企業である。2022年には自社技術による核融合反応の実証を発表し注目を集めたが、2025年には自前の発電所建設計画を撤回し、増幅器・ターゲット技術のライセンス事業へと大きく舵を切った。トカマクやレーザー方式が主流を占める中、なぜ弾丸というユニークな手法を選び、なぜ戦略を転換したのか。その歩みを整理する。

会社概要と沿革

First Light Fusionは2011年、オックスフォード大学の研究者ニコラス・ホーカー氏とその指導教員だったヤニス・ヴェンティコス教授によって設立された大学発スピンアウトである。ホーカー氏の博士研究はテッポウエビの爪が生む衝撃波・空洞崩壊現象の流体力学シミュレーションに端を発しており、この知見が同社の核融合アプローチの土台になったとされる。IP Groupなどからシード資金を調達して立ち上がった、英国初期の民間核融合企業のひとつである。2024年4月にはホーカー氏がCEOを退任し、2025年2月には航空宇宙企業リアクション・エンジンズの元CEOであるマーク・トーマス氏が新CEOに就任した。

プロジェクタイル慣性方式のしくみ

同社の中核技術は「プロジェクタイル(弾丸)慣性核融合」と呼ばれる独自方式である。英国最大級とされる二段式ガスガンを用い、重量約100グラムの弾丸を秒速6.5キロメートルという極超音速で発射し、燃料ターゲットに衝突させる。この衝撃波でターゲットを圧縮し、核融合に必要な超高温・高圧状態を作り出す発想であり、レーザーや磁場を用いる主流方式とは一線を画すアプローチとされる。

2022年の核融合実証と増幅器技術

First Light Fusionは2022年4月、2021年11月に実施した実験で自社方式による核融合反応の生成に成功したと発表し、英国原子力公社(UKAEA)による検証も受けたとされる。この成果を支えたのが同社独自の「増幅器(amplifier)」技術である。弾丸の衝突で生じる圧力をターゲット内部でさらに増幅し、より低い衝突速度でも燃料の高速な内部爆縮と多方向からの収束を実現する仕組みとされ、同社はこの増幅器こそが自社技術の核心的な差別化要素だと位置づけている。

戦略転換——ライセンスビジネスへ

2025年3月、First Light Fusionは自社で核融合発電所を建設する計画を撤回し、実証機「Machine 4」の開発計画も中止すると発表した。発電プラントの運営は資金負担が大きく、当時の市場環境では現実的でないと判断したためとされる。新戦略の下では、増幅器技術を組み込んだ消耗品としての「ターゲット」を設計・製造し、レーザー方式を含む他の慣性核融合方式の企業にライセンス・供給することで早期の収益化を目指すとされる。2025年9月には、圧縮と点火を分離することで高いエネルギー利得を狙うとする新概念「FLARE」を発表し、2026年4月にはUKAEAも戦略的に出資する形で2,500万ポンドの資金調達を実施したとされる。同社の累計調達額はこれまでに約1.07億ドルに達したとされる。

競合・提携の地図

慣性核融合分野では、米国立点火施設(NIF)を擁するローレンス・リバモア国立研究所や、レーザー方式のFocused Energy、Xcimer Energyなど多様なプレイヤーが存在する。First Light Fusionは自社で発電所を持つのではなく、これらのプレイヤーに増幅器・ターゲット技術を供給する「イネーブラー」の立ち位置を志向している点が特徴的である。英国内では磁場方式のTokamak EnergyやSTEPプログラムを推進するUKAEAとも並び立ち、政府による戦略的出資が示すように、英国の核融合産業戦略の一角を担う存在として位置づけられているとみられる。

課題と展望

自社発電所計画からの撤退は、慣性核融合というアプローチ自体の限界というより、単独企業がプラント建設まで担うビジネスモデルの資金負担の重さを映した判断だとされる。ライセンス路線への転換により収益化の時期は早まる可能性がある一方、増幅器・ターゲット技術を実際に採用するパートナー企業をどれだけ獲得できるかが今後の成否を左右するとみられる。FLARE構想が掲げる高利得は現状の実験水準を大きく上回るものであり、その実現可能性の検証はこれからの課題である。2026年の資金調達にUKAEAが加わったことは、英国政府による慣性核融合への期待の表れとも読み取れ、同社の技術戦略が国内の核融合産業政策とどう連動していくかが注目される。

出典: First Light Fusion公式サイト・ニュースリリース、World Nuclear News、Nuclear Engineering International、The Engineer、IP Group plcポートフォリオニュースなどをもとに編集部作成。

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