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企業解説

企業解説 2026/07/03

Focused Energy 徹底解説——独米二拠点で挑むレーザー核融合の本命候補

2021年、NIFの点火成功と同時期に産声を上げたFocused Energyは、ダルムシュタット工科大学発の技術をもとに「直接駆動・高速点火」というレーザー核融合の中でも独自路線を歩む企業である。2026年6月にはシリーズAで2.4億ドルを調達し、業界でも最大級のシリーズAとして注目を集めた。ドイツ・ヘッセン州の旧原発跡地での商用炉建設構想も進み、独米両政府の支援を受けながら商業化を目指す。本稿ではその技術、資金、体制を整理する。

会社概要と創業チーム

Focused Energyは2021年、ドイツのダルムシュタット工科大学発の技術をもとに設立されたとされる。共同創業者には、プラズマ物理学者として長年核融合研究に携わってきたMarkus Roth教授(現Chief Science Officer)らが名を連ねる。2024年には元Volta Charging CEOのScott Mercer氏がCEOに就任し、米国展開を加速させる体制になったとされる。拠点は本社のダルムシュタットに加えベルリン、米オースティン、サンフランシスコに置かれ、160名超・20カ国以上の科学者・技術者が在籍するという。

技術方式——直接駆動レーザー慣性と高速点火

同社が採用するのは、レーザー慣性核融合の中でも「直接駆動・高速点火(fast ignition)」と呼ばれる方式である。レーザーで燃料ペレットを直接照射・圧縮したのち、別のピコ秒級超高強度レーザーでプラズマの一点を加熱し点火する二段階方式とされ、圧縮のみに頼るNIFの「ホットスポット」方式とは異なるアプローチである。構想では180本のビームのうち約80本を爆縮用、残り約100本を点火用に充てる設計とされる。この方式が実証されれば、より少ないレーザーエネルギーで高い利得を狙えるとされている。

資金調達——シリーズA 2.4億ドル

2026年6月に発表されたシリーズAでは2.4億ドルを調達し、核融合業界における単独のシリーズAとしては過去最大級とされる。投資家にはドイツ電力大手RWE、独連邦破壊的イノベーション庁(SPRIND)、欧州イノベーション会議(EIC)ファンド、既存投資家のPrime Movers Labなどが名を連ねた。これにより同社の累計民間調達額は3億ドル規模に達したとされ、これとは別に独米政府からの助成も2億ドル規模にのぼるとされる。調達資金はヘッセン州ビブリスの拠点整備などに充当される計画である。

独米二拠点体制と政府支援

Focused EnergyはRWE、ヘッセン州と覚書を締結し、脱原発方針で閉鎖された旧原発サイトのビブリスに1ギガワット級の商用レーザー核融合炉を建設する構想を進めているとされる。目標時期は2035年、総事業費は50億〜70億ユーロ規模と見込まれ、ヘッセン州は初期研究支援を約束したという。米国側では、DOEの「マイルストーンベース・フュージョン開発プログラム」採択8社の一社として、燃料ターゲット設計などのマイルストーン完了をDOEから認定されたとされる。INFUSEプログラムを通じた米国立研究所との共同研究実績もあるという。

競合との比較——Inertia・Xcimer・Marvel Fusionなど

レーザー核融合分野には複数の有力プレイヤーが並走する。2026年2月に4.5億ドルを調達したInertiaは、NIFで実証済みのホットスポット方式を直接受け継ぐ路線とされる。Xcimer Energyはエキシマレーザーで独自にシステムを再設計するアプローチを採り、同じドイツ発のMarvel Fusionはナノ構造ターゲット×短パルスレーザーという別方式を追求する。Focused Energyは、直接駆動・高速点火という独自方式と独米両政府の後ろ盾を武器に差別化を図っている位置づけと言える。

課題と展望

同社が掲げる直接駆動・高速点火方式は、NIFで実証された間接駆動方式とは異なる技術的道筋であり、実験室規模での点火実証はこれからの段階とされる。2035年の商用炉稼働という目標達成には、点火実証、繰り返し照射に耐えるレーザー技術、燃料ペレットの量産体制など多くの技術的ハードルが残る。一方で、独米両政府からの資金的・制度的支援を同時に得ている点は他の核融合スタートアップと比べても手厚く、ビブリスでの実証が進めば「欧州発の商用レーザー核融合」のモデルケースとなる可能性がある。今後の焦点は、シリーズAで得た資金がどこまで技術実証を前進させるかにある。

出典: TechCrunch、Business Wire、Focused Energy公式ニュースリリース、World Nuclear News、optics.org、ANS Nuclear Newswireなどをもとに編集部作成。

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