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企業解説

企業解説 2026/07/31

Neo Fusion(聚変新能)とBEST徹底解説——2027年完成へ驀進する中国の「発電実証」トカマク

中国の核融合を1社で象徴するなら、合肥のNeo Fusion(聚変新能)だろう。中国科学院のトカマクEASTで積んだ科学成果を、次期装置BESTで「発電のデモンストレーション」に変える——それだけのミッションのために、EV大手NIO(蔚来)、中国石油、安徽省の国有資本が同じ資本テーブルに着いた。2027年完成・2030年発電実証という、世界最速級のスケジュールで建設が進む国家プロジェクトの全体像を整理する。

BESTとは:EASTの次、「燃える」プラズマで発電を見せる装置

BEST(Burning plasma Experimental Superconducting Tokamak、中国名: 緊湊型聚変能実験装置、愛称「夸父啓明」)は、合肥の中国科学院プラズマ物理研究所(ASIPP)が設計する次期超電導トカマクだ。1億度・1,000秒級の運転記録を持つEASTが「プラズマを保てること」の証明だったのに対し、BESTの任務はD-T燃料で燃焼プラズマを実現し、正味の核融合パワー利得と発電のデモンストレーションを2030年にも世界に先駆けて示すことにある。中国の核融合は「BEST(発電実証)→ 核融合工程示範堆(工学実証)→ 商用炉」という三段階戦略で整理されており、BESTはその第一段の主役である。

建設は驚速:2025年組立開始、2027年完成予定

建設のテンポは中国の面目躍如だ。敷地約16万m²の合肥のサイトで中建四局が施工し、2025年3月に主要建屋の躯体が立ち上がると、2025年5月1日には主要機器の総組立(総装)を開始。同年10月1日に主機最初の重要部品であるデュワー底座の据付が完了し、2026年7月には第一段の主機部品(底部コールドシールド、ポロイダル磁場コイルの一部)のピット搬入まで進んだ。完成は2027年の予定と報じられる。ITERが数十年単位で進むのと同じ種類の装置を、着工から実質数年で組み上げる速度であり、この工程管理力こそが中国の最大の武器といえる。

Neo Fusion:NIO・中国石油・安徽国資の「官民混成」資本

事業主体の聚変新能(安徽)有限公司は2023年5月、ASIPPの磁気閉じ込め核融合技術を商業化する唯一のプラットフォームとして合肥に設立された。設立時の登録資本50億元のうち約3割をNIO系(蔚来本体9.95億元+蔚来資本5.05億元)が出資したことで「EVメーカーが核融合に参入」と話題を呼んだ。2024年7月には登録資本を145億元(約20億ドル)へ増資し、中国石油系の昆倫資本と、中国科学院合肥物質科学研究院傘下の合肥科学島控股がそれぞれ約2割を取得。皖能資本・合肥産投など安徽省・合肥市の国有資本も並び、NIOの持分は約5%に希釈された。2026年6月には中油資本が昆倫資本に核融合投資向けとして6.55億元を追加するなど、エネルギー国有大手の関与はむしろ深まっている。

CRAFTと582トン磁石:装置の裏にある「部品を鍛える施設」

BESTの速度を支えるのが、同じ合肥にあるCRAFT(聚変堆主機関鍵系統総合研究設施)だ。核融合炉の主要部品を実物大で試作・検証する専用施設で、2026年6月27日には長さ21m・幅12m・重量582トンという世界最大級のトロイダル磁場コイル(蓄積エネルギー120GJ、ITER同型コイルの約3倍)が全パラメータ試験に合格した。素材から製造まで100%国産という点も強調されており、この技術基盤がBESTと将来の示範堆の双方を支える。装置側でも、真空容器セクターを2.09億元で落札した合鍛智能をはじめ、電源・低温・遮蔽で国内上場企業への発注が2025年末から相次いでおり、BESTは中国サプライチェーンの「実地訓練場」として機能している(中国特集)。

「二つの国家隊」:上海の中国聚変能源との違い

混同しやすいのが、2025年7月に上海で設立された中国聚変能源(登録資本150億元)だ。こちらは中国核工業集団(CNNC)主導で、成都の核工業西南物理研究院(HL-3「環流三号」)の系譜に連なる。つまり中国は、中国科学院系(合肥・聚変新能・BEST)とCNNC系(上海/成都・中国聚変能源)という2本の国家チームを並走させている。技術系譜も資本系統も異なる二重投資であり、一方が躓いてももう一方が進む冗長設計になっている点は、国家戦略として読み解く価値がある。

視点:2030年「最初に発電を見せる」レースの本命候補

米国ではHelionが2028年の商用機稼働を、CFSがSPARC後の商用炉ARCを掲げるが、国家資本の総力で単一装置に集中投下するBESTは「最初に核融合発電のデモを見せる」レースの有力候補に浮上している。もっとも、燃焼プラズマの物理は世界の誰もまだ踏んでいない領域で、トリチウム取扱いや中性子下での機器運用など、速度だけでは越えられない関門も多い。2027年の完成、そしてファーストプラズマの質——BESTの進捗は、日本を含む各国の核融合政策のベンチマークとして今後数年の最重要ウォッチ対象である。

出典: 新華社・央視網(CRAFT 582トンTFコイル、2026/6/27-28)、新浪財経(主機部品据付、2026/7/1)、財聯社(2027年竣工報道)、見道網(総装開始、2025/5)、界面新聞・新浪財経(増資・株主構成、2024/7)、量子位(設立・NIO出資、2023/5)、鳳凰網(二つの国家隊)、中国語版Wikipedia「緊湊型聚変能実験装置」ほかをもとに編集部作成。数値は各出典に記載の値です。

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