企業解説 2026/07/03
Type One Energy 徹底解説——TVAと組むステラレータの実用化先鋒
米ウィスコンシン大学発のステラレータ企業Type One Energyは、テネシー峡谷開発公社(TVA)の石炭火力跡地で実証機「Infinity One」の建設を進めているとされる。2026年に入り大型の資金調達や英国展開、著名経営者の取締役就任などが相次ぎ、ステラレータ勢の中でも存在感を強めている。本稿では同社の沿革、技術方式、資金・体制、競合比較、今後の課題を整理する。
会社概要と沿革
Type One Energyは2019年、ウィスコンシン大学マディソン校の研究者らが中心となって設立されたとされる。同大学はステラレータ研究で長年の実績を持ち、オークリッジ国立研究所(ORNL)の人材とも連携してきたとされる。設立当初はARPA-Eからの助成などを足がかりに、次世代ステラレータ型核融合発電プラントの設計に着手したという。以来、米国のステラレータ開発企業の代表格として位置づけられるようになった。
技術方式——ステラレータの強みと同社のアプローチ
ステラレータはトカマクと異なり、コイル形状自体をねじれた立体構造にすることでプラズマを閉じ込める方式で、外部からの電流駆動に頼らず定常運転がしやすい点が長所とされる。Type One Energyは非平面形状の高温超伝導(HTS)磁石技術を核とし、大規模な最適化シミュレーションに基づく設計を強みとしているとされる。2025年3月には、Journal of Plasma Physics誌の特集号にて査読論文を発表し、燃料サイクルやダイバータ設計を含む「実用的な核融合パイロットプラントの物理基盤」を体系的に示したという。
Infinity One計画とTVA・テネシー州
同社が最も注力するのが、テネシー州クリントンにあるTVAの旧Bull Run石炭火力発電所跡地で計画する実証機「Infinity One」である。Bull Runは2023年末に56年の稼働を終えて閉鎖された施設とされ、跡地の一部を活用してステラレータの工学実証プラットフォームを建設する計画という。2029年ごろの稼働開始が目標とされる。さらにTVAとは、400MWe級の発電を目指す商用パイロットプラント「Infinity Two」の共同開発でも協定を拡大しており、2030年代半ばの実用化が視野に入っているとされる。
資金調達と体制強化
Type One Energyは2026年1月、転換社債(コンバーティブルノート)により8,700万ドルを調達したと報じられ、これにより累計調達額は1.6億ドルを超えたとされる。米エネルギー省(DOE)のマイルストーンベース核融合開発プログラムの採択企業の一社でもある。体制面では2026年6月、英BPの元CEOバーナード・ルーニー氏が取締役に就任したと発表され、大規模プロジェクト遂行や資本市場での経験を経営に取り込む狙いがあるとされる。
競合との比較——Proxima・Thea等のステラレータ勢
ステラレータ方式では、ドイツのマックス・プランク・プラズマ物理研究所発のProxima Fusionや、プリンストン発で平面コイルによるアプローチを採るThea Energyなどが競合とされる。Proximaは2030年代初頭の実証機、Theaも2030年前後の実証機を目指しているとされ、いずれもType One Energyとほぼ同時期の実用化を掲げている。Type One EnergyはTVAという実際の電力会社と組み既存インフラ跡地を活用する点、英国でもTokamak Energy・AECOMと「UK Infinity Fusion Consortium」を組成し2026年5月に発表するなど、国際展開の速さで独自色を出しているとされる。
課題と展望
Infinity One・Infinity Twoともに2020年代末から2030年代半ばという長期スケジュールを掲げており、HTS磁石の量産化やトリチウム燃料サイクルの実証など技術的なハードルは依然大きいとされる。資金面でも次ラウンドの完了や継続的な政府支援の確保が課題となる。一方で査読論文による物理基盤の公開、TVAとの具体的な立地確保、英国展開など、他のステラレータ勢に先んじて具体性のあるマイルストーンを積み重ねている点は評価材料といえる。今後は建設許認可の進捗や資金調達の完了、DOEマイルストーン達成状況が注目される。
出典: Type One Energy公式サイト、World Nuclear News、TechCrunch、Businesswire、AECOM、UW-Madison College of Engineering、Journal of Plasma Physics特集号、ANS Nuclear Newswireなどをもとに編集部作成。