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Research

Research 2026/07/03

米国の核融合政策——民間主導を支える国家戦略と規制の現在地

米国の核融合政策は、2022年のホワイトハウス・サミットを起点に、官民連携による商業化加速という一本の軸で動いてきたとされる。DOE(エネルギー省)はマイルストーン方式の資金供与や規制の明確化を通じて民間企業の事業化を後押しし、NRC(原子力規制委員会)は核分裂とは別枠の規制の枠組みを選んだ。2025年以降は原子力政策全体の追い風や州レベルの独自規制も加わり、政策環境は重層化しつつある。本稿ではその全体像を整理する。

Bold Decadal Vision——商業化加速の宣言

2022年3月、ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)とDOEは「Bold Decadal Vision for Commercial Fusion Energy」と題したサミットを共催した。同ビジョンは2030年代に民間主導の核融合パイロットプラントを稼働させることを目標に掲げ、これを機にDOEはフュージョンエネルギー担当のコーディネーターを新設するなど、省庁横断の体制づくりに着手した。あわせて5,000万ドル規模の資金提供機会も発表され、産学官の連携を制度面から後押しする流れが生まれたとされる。

マイルストーン方式フュージョン開発プログラム

2022年9月に発表されたこのプログラムは、NASAの商業宇宙輸送サービス(COTS)を範にとった官民パートナーシップとされる。2023年5月に8社が採択され、Commonwealth Fusion Systems、Type One Energy、Tokamak Energy、Zap Energyなど、トカマク、ステラレータ、慣性閉じ込め、Zピンチと多様な方式が並んだ。企業は定量的なマイルストーン達成に応じて連邦資金を受け取る仕組みで、当初約4,600万ドルの連邦資金が呼び水となり、採択企業は選定後に3億5,000万ドル超の民間資金を新たに調達したとされる。

予算とDOE体制——FESとICFの二本立て

DOEの核融合関連予算は、基礎研究を担うFusion Energy Sciences(FES)プログラムと、NIFを運営するローレンス・リバモア国立研究所などを支える慣性閉じ込め核融合(ICF)予算の二本立てで構成される。FY2025ではFES予算が約7.9億ドル、ICF予算が約6.8億ドルとされ、FESのうち一定額は国際プロジェクトITERへの拠出(FY2025で2億ドル)に充てられている。さらにDOEは大学・国立研究所と民間を橋渡しする「FIREコラボラティブ」や、民間との共同研究を支援するINFUSEプログラムなど、基礎科学と産業化の間を埋める複数の施策を並行して展開している。

NRCの規制決定——核分裂とは別枠の道

2023年4月、NRC委員は全会一致で、核融合装置を既存の「バイプロダクト・マテリアル(副産物物質)」規制の枠組みで扱う方針を決定した。核分裂用の原子炉規制ではなく、放射性物質の取り扱いを定める規則を適用する形とされる。背景には、核融合が臨界の連鎖反応を伴わず、閉じ込めが失われれば反応自体が止まるという核分裂との構造的な違いがあり、主なリスクはトリチウム燃料や構造物の放射化など、既存の物質取扱規制で管理可能な範囲にとどまるという判断があったとされる。2026年2月にはこの方針に基づく具体的な規則案もNRCから公表されている。

州レベルの動き——テネシー州の先行例

連邦規制の明確化と並行して、州レベルでも独自の枠組み整備が進む。テネシー州は2026年6月に全米初となる核融合専用の規制枠組みを施行し、技術中立的なアプローチで核融合装置の登録・許認可を定めたとされる。同州ではType One EnergyがTVA(テネシー峡谷開発公社)と提携し、旧火力発電所跡地でステラレータ方式のパイロットプラント建設を計画するなど、州政府・電力事業者・企業が一体となった誘致が進む。

民間投資との関係——政策が呼び水となる構図

FIA(Fusion Industry Association)の報告によれば、2025年7月までの1年間で核融合業界は約26.4億ドルの資金調達を記録し、過去2番目の高水準になったとされる。業界全体の累計調達額は約97.7億ドルに達し、2021年から5倍規模に拡大したという。マイルストーンプログラムの採択が民間資金の呼び水になった例が示す通り、連邦の少額投資が民間資本を引き出す構図が政策側の狙いとも重なっている。サプライチェーン投資も2025年に増加しており、資金の裾野は製造・部材領域にも広がりつつある。

課題と論点

2025年5月、トランプ政権は先進原子炉の展開加速などを柱とする複数の大統領令に署名し、NRCの許認可迅速化や規制見直しを指示したが、これらは主に核分裂炉を対象としたものとされ、核融合固有の措置は限定的との指摘もある。また政府監査院(GAO)は、DOEの商業化支援に関する計画の具体性がなお不十分だと指摘したとされる。予算の先行きも議会の歳出審議に左右されやすく、ITER拠出金など既存コミットメントとの兼ね合いで、新興企業向け資金の伸びしろが制約される可能性も論点として残る。

出典: DOE、ホワイトハウス(OSTP)、NRC、Fusion Industry Association(FIA)、Congressional Research Service(CRS)、GAO、各種業界報道をもとに編集部作成。

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