用語集 2026/07/03
ブランケットとは——核融合炉の“燃料工場”と“発電装置”を兼ねる心臓部
ブランケットは、核融合炉の炉心プラズマをぐるりと包むように設置される大型の構造物である。名前は「毛布」を意味するが、その役割は防寒どころではない。燃料であるトリチウムを自ら生み出し、核融合反応が放つ熱を電力に変換できる形で取り出し、さらに周囲の機器や人を放射線から守る。まさに核融合発電炉の心臓部といえる設備である。
3つの機能——増殖・熱回収・遮蔽
ブランケットが担う役割は大きく3つに整理できる。ひとつはトリチウム増殖で、核融合反応で自然界にほぼ存在しない燃料トリチウムを炉内で作り出す機能だ。ふたつめは熱回収で、核融合反応によって生まれた中性子の運動エネルギーを熱として受け止め、発電に使える形で炉の外へ取り出す。みっつめは遮蔽で、超伝導コイルなどの周辺機器や作業員を、中性子や放射線から守る役割を果たす。この3つを同時にこなす必要がある点が、ブランケット開発の難しさの本質である。
トリチウム増殖とリチウム
核融合発電で主に使われるD-T反応(重水素とトリチウムの反応)では、燃料のトリチウムを外部から調達し続けるのは現実的ではない。そこでブランケットの中にリチウムを含む材料を配置し、核融合反応で飛んでくる中性子をリチウムに当てることで、炉の中でトリチウムを新たに生み出す。これが「トリチウム増殖」と呼ばれる仕組みである。増殖材の形態には、リチウム化合物を小さな球状に固めた固体ペブルベッドを使う方式と、リチウムと鉛の合金などを液体のまま循環させる方式があり、世界各国でそれぞれの開発が進められている。
増殖比(TBR)という指標
ブランケットの性能を測るうえで重要な指標が、トリチウム増殖比(TBR:Tritium Breeding Ratio)である。これは、炉が燃料として消費するトリチウムの量に対し、ブランケットで新たに増殖できるトリチウムの量がどれだけの割合になるかを示す。TBRが1を下回れば、炉を動かし続けるための燃料が足りなくなってしまう。そのため実際の炉設計では、配管や機器で失われる分も見込み、TBRを1より十分大きく確保することが目指されている。中性子を増やすベリリウムなどの増倍材を組み合わせる工夫も、この比率を高めるための重要な技術要素である。
ITERのテストブランケットモジュール(TBM)
ブランケットは核融合炉の実用化に不可欠な技術でありながら、実機に近い環境での実証はこれからの段階にある。国際熱核融合実験炉ITERでは、日本・欧州・中国・韓国の4極がそれぞれ独自方式のテストブランケットモジュール(TBM)を持ち込み、ITERの核融合環境の中で試験する計画が進められている。日本は量子科学技術研究開発機構(QST)を実施機関とし、水冷却セラミック増殖方式のTBM開発を主導する枠組みを欧州との間に築いてきた。ここで得られる知見が、将来の原型炉におけるブランケット設計に直結していく。
日本企業の関わり
ブランケット関連技術の実用化には、日本のスタートアップも存在感を示している。京都フュージョニアリングは、中性子の熱エネルギーを液体金属で運び発電や水素製造に生かす「フュージョンブランケット・熱サイクルシステム」の開発を進めており、統合試験プラント「UNITY-1」でその実証にも取り組む。またQSTから、ITERのテストブランケットシステム向けトリチウム回収・計量システムのモックアップ開発を受注したことも公表されている。増殖材と対をなす中性子増倍材のベリリウムをめぐっては、スタートアップのMiRESSOがHelical Fusionと業務提携を結ぶなど、素材面から支える日本企業の動きも広がっている。
出典: 量子科学技術研究開発機構(QST)公式サイト・資料、日本原子力研究開発機構(JAEA)資料、日本原子力学会資料、京都フュージョニアリング公式サイト・プレスリリース、MiRESSO公式サイト、Helical Fusion公式サイトをもとに編集部作成。
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