Research 2026/08/01
A株「核融合銘柄」マップ2026——受注実績で選ぶ中国上場27社
中国の株式市場で「可控核聚変(制御核融合)」は今年最大級のテーマだ。だが証券メディアが挙げる「概念株」リストには、実際の受注がある企業と、連想だけで買われている企業が混在している。当データベースは今回、入札落札・供給契約・会社側開示という公表事実で受注が確認できた上場企業27社を新規収録した(中国の収録は計77社に)。この記事はその「実需組」だけを4系統に整理したマップである。
方法論:「概念」ではなく「中标(落札)」で選ぶ
選定基準はひとつ——BEST・EAST・CRAFT・ITER・HL-3・星火一号など実在プロジェクト、または核融合企業への受注・納入・供給が公表情報で確認できること。証券レポートの「受益期待」だけの銘柄、核融合スタートアップへの出資のみの銘柄(中鼎股份・紫金鉱業など)、核分裂(原発)受注を核融合と混同している銘柄は除外した。逆に言えば、以下の社名はすべて出典となる落札公告・開示・一次報道が存在する。
主要銘柄マップ(抜粋15社)
| 企業 | コード | 核融合での役割 | 受注・実績(公表ベース) |
|---|---|---|---|
| 国机重装 | 601399 | BEST真空室モジュール・ITER第一壁 | BEST真空室 3億元超を受注(2026/1) |
| 中洲特材 | 300963 | 真空室支持部品・第一壁材料 | BEST支持部品 1.8億元を単独落札(2025/10) |
| 合鍛智能 | 603011 | 真空容器セクター | BEST真空容器 2.09億元を落札(2025/12) |
| 愛科賽博 | 688719 | 高速制御電源 | BEST・HL-3の電源を落札(2025/12) |
| 応流股份 | 603308 | 全タングステンダイバータ鋳造 | ITER・EAST・CFETR向け シェア8割超と報道 |
| 派克新材 | 605123 | 真空室・第一壁・ダイバータ鍛造品 | 核融合部品の受注 7.5〜15億元規模と報道 |
| 東方鉭業 | 000962 | 高純度ニオブ材(超電導線材基材) | 超導級ニオブで世界シェア7割・ITER核級認証 |
| 西部材料 | 002149 | タングステン・モリブデン合金 | 核融合向け材料への期待で株価急騰と報道 |
| 精達股份 | 600577 | HTS線材(上海超導へ18.15%出資) | 上海超導が能量奇点の磁石に供給 |
| 百利電気 | 600468 | ビスマス系HTS線材 | 小型実験装置への納入検証を完了 |
| 氷輪環境 | 000811 | 液体ヘリウム冷凍システム | EAST・CRAFTへ量産納入、582トン磁石試験に参画 |
| 炬光科技 | 688167 | 高出力半導体レーザー | 2024年に核融合関連 5.8億元超を新規受注 |
| 国電南瑞 | 600406 | 励磁電源 | 核融合装置電源の国産代替を複数完了 |
| 漢鐘精機 | 002158 | ドライ真空ポンプ | 国内トカマクの真空機組で採用多数と報道 |
| 航天晨光 | 600501 | 真空配管・ベローズ | ITER納入完了、CRAFTへ量産供給 |
このほか理工光科(光ファイバセンサ)、四創電子(電源モジュール)、哈焊華通(溶接材料)、長城電工(水冷系配電盤)、国力股份(真空コンデンサ)、斯瑞新材(高強度銅合金)、久立特材(ITER PF導管)、海陸重工(デュワー)、申菱環境(低温冷却)、許継電気(磁石給電)、中国西電(変配電)、東南網架(予埋鋼構造)、新研股份(精密部品)など計27社を収録。既収録の西部超導・安泰科技・聯創光電・上海電気・東方電気・雪人股份・英傑電気などと合わせ、データベースの中国・供給網フィルタで一覧できる。
系統1:BEST発注網——「いま」お金が流れている場所
最大の実需源は合肥のBEST(徹底解説)だ。2025年10月〜2026年1月に発注が集中し、真空容器(合鍛智能2.09億元)、支持部品(中洲特材1.8億元・単独落札)、真空室モジュール(国机重装3億元超)、電源(愛科賽博)、蓄電(王子新材)、ケーブル(起帆電纜)、低温弁箱(杭氧)と、装置一式の調達が上場企業に割り振られた。2027年完成予定に向けて発注はまだ続く見込みで、「BESTの次の落札公告」がこのテーマの最重要カレンダーになっている。
系統2:ITER・国家装置の納入組——実績の年輪が違う
応流股份(タングステンダイバータでITER/EAST/CFETRシェア8割超)、東方鉭業(超導級ニオブ世界シェア7割・ITER核級認証)、久立特材(ITERのPF導管)、航天晨光(真空配管をITERへ納入完了・CRAFTへ量産中)など、10年単位の納入実績を持つ組。BESTブームの前から核融合で稼いでおり、受注の持続性という意味で最も手堅い層だ。
系統3・4:素材/磁石と電源/極低温——ボトルネックを持つ者が強い
素材・磁石系では、上海超導へ出資しHTS線材を能量奇点の磁石に供給する精達股份、ビスマス系HTSの百利電気、タングステン・モリブデンの西部材料。電源・極低温系では、582トン磁石(CRAFT)の試験を支えた液体ヘリウム冷凍の氷輪環境、励磁電源の国電南瑞、真空ポンプの漢鐘精機が代表格だ。HTS線材と大型極低温はどの炉にも要るボトルネック部材であり、国内需要(BEST・民間第2世代)と輸出の両方を取れる点で系統1より息の長いテーマといえる。
視点:日本の投資家・事業会社がここから読むべきこと
第一に、中国では「国家装置の調達が上場企業の受注として可視化される」ため、核融合産業の立ち上がりを財務データで追える世界初の市場になりつつある。第二に、この27社の顔ぶれは日本のサプライチェーン(解説)とほぼ鏡写しだ——ニオブ材は東方鉭業に対しJASTEC、ダイバータは応流股份に対し金属技研・大同特殊鋼、冷凍機は氷輪環境に対し日本酸素。つまりBESTの発注リストは、日本企業が世界市場で戦うことになる相手の名簿でもある。テーマ株の過熱と実需を切り分けて追う視点は、投資でも事業でも今後ますます重要になる。※本記事は公開情報の整理であり、投資助言ではありません。
出典: 各社の落札公告・IR開示、財聯社・証券時報・新浪財経・鳳凰網・東方財富(2025年10月〜2026年7月)、当データベース収録情報をもとに編集部作成。金額・シェアは各出典に記載の報道値です。