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企業解説

企業解説 2026/08/01

Xcimer Energy 徹底解説——「ガラスではなくガス」、冷戦のレーザーで核融合を安くする

レーザー核融合はNIFが2022年に「科学的には燃える」ことを証明した。残る問いはただひとつ——安くできるかだ。米デンバーのXcimer Energyの答えは意表を突く。最先端の半導体レーザーではなく、冷戦期のミサイル防衛研究で育った「ガスのレーザー」=KrFエキシマレーザーを現代に蘇らせ、レーザーコストを1ジュール100ドル未満へ引き下げるという。2026年6月、同社は民間最大級のレーザーPhoenixを稼働させ、1週間後にはDOEが商用炉Athenaの前概念設計を承認した。いま最も注目すべきレーザー核融合企業を解説する。

会社概要:NIF・Z・DoDの「レーザーの古豪」が集う

Xcimer Energyは2022年、コナー・ギャロウェイCEO(チーフ・サイエンス・オフィサー兼務)とアレクサンダー・ヴァリス社長が設立。2024年にシリコンバレーからコロラド州デンバーへ移り、7.4万平方フィートのレーザー実験棟を構える。従業員は約150〜200人(2026年時点・出典により幅)で、さらに倍増を計画中とされる。技術諮問委員会にはNIF/LLNL、サンディアのZマシン、国防総省の指向性エネルギー研究の元幹部が並び、ロスアラモス・リバモア・オークリッジ各国立研究所やGeneral Atomics、Westinghouseとも連携する。DOEマイルストーン・プログラム8社の一角でもある。

技術:「ガス、ガラスにあらず」——エキシマレーザーの経済学

NIFや多くのレーザー核融合勢はNd:ガラスや半導体(ダイオード)励起の固体レーザーを使う。Xcimerが選んだのは電子ビーム励起のKrFエキシマレーザー(波長248nm)だ。利得媒質が「ガス」なので大口径化が容易で、高価な大型光学ガラスや半導体サプライチェーンに縛られない。1980年代の戦略防衛構想(SDI)時代に大規模化の技術基盤が築かれた方式であり、同社はこれを「レーザーエネルギーを工業価格で作る」手段と位置づける。ビームラインはNIFの192本に対しわずか2本。目標コストは1ジュール100ドル未満だ。

エキシマの弱点である長いパルスは、誘導ブリルアン散乱(SBS)でナノ秒に圧縮する。Phoenixに組み込まれた全長38mのSBSガス光学系は、エネルギー・規模ともSBS圧縮として史上最大とされる。標的側も物量で勝負する。燃料カプセルはNIF比で直径3.2倍・燃料約50倍、1発あたり最大2GJ(ガソリン約60リットル分)の核融合エネルギーを狙い、大きいぶん製造公差にも寛容だ。炉室は溶融塩の液体壁が全周を流れ、中性子から壁を守りつつトリチウム増殖と熱輸送を兼ねる(ブランケット解説)。約1〜2秒に1発の繰り返し運転で発電所として成立させる設計である。

マイルストーン:Phoenix稼働とDOEのAthena承認が1週間で連続

2026年6月3日、1kJ級プロトタイプレーザーPhoenixがデンバーで稼働開始。民間セクター初の電子ビーム励起KrFレーザーで長パルス発振とSBS圧縮を通しで実証する、「世界最大の民間保有レーザー」(同社)だ。その1週間後の6月10日には、DOEが724ページの提出書類を審査のうえ、商用発電所Athenaの前概念設計と技術ロードマップのマイルストーンを承認した。資金面ではシリーズA 1億ドル(2024年6月、Hedosophiaリード、Breakthrough Energy Ventures・Lowercarbon・Prelude・Emerson Collective等参加)を軸に私募累計1.1億ドル超、DOEマイルストーン(同社分900万ドル)とARPA-E(400万ドル・テキサスA&M大/海軍研究所と共同)が上乗せされる。2026年2月には独TRUMPFと共著でレーザー商用化ロードマップの白書も公表した。

ロードマップ:Anvil(2028)→Vulcan(2031年ブレイクイーブン目標)→Athena

計画は4段階だ。Phoenix(稼働中)で要素実証、Anvil(2028年)で商用スケールの単一アンプ「Argos」(100kJ超)を建設・試験、Vulcan(2030年代初頭)でArgosを束ねて標的に4MJ(12MJまで増強可能)を投入し、2031年末までに「壁のコンセントから入れた電気を上回る核融合出力」=ウォールプラグ・ブレイクイーブンを狙う。Vulcanは核兵器効果試験など国家安全保障用途も掲げ、立地は2026年中に選定予定。最終形のAthenaは2030年代半ば、連続400MW級の世界初レーザー核融合発電所を目指す。

視点:レーザー慣性「三つ巴」の中での立ち位置

レーザー慣性ではNIF直系の物理を最新固体レーザーで拡張するInertia(シリーズA 4.5億ドル)、独発で短パルス・直接照射のMarvel Fusion、NIF方式商用化のLongviewらが並ぶが、Xcimerの賭けはただ一点、「点火物理はNIFが証明済み。ならば勝負はレーザーの値段だ」という割り切りにある。巨大カプセル+液体壁で物理・工学の余裕を買い、レーザーはあえて枯れた方式で安くする——この設計思想が成立するかは、2028年のArgosアンプがコスト目標どおり作れるかでほぼ決まる。ウォールプラグ・ブレイクイーブンという「電気料金の言葉で語れる指標」を2031年に置いた点も含め、商用化レースの台風の目である。※記載の数値は各出典の公表値です。

出典: Xcimer Energy公式サイト・プレスリリース(Phoenix稼働 2026/6/3、DOE承認 2026/6/10ほか)、Crunchbase News(シリーズA、2024/6)、ARPA-E発表(2025/2)、World Nuclear News、Denver Post(2026/5)、当データベース収録情報をもとに編集部作成。

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