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企業解説

企業解説 2026/07/30

Thea Energy 徹底解説——「平らな磁石」でステラレータを量産品に変える

ステラレータは「定常運転に強いが、作るのが難しすぎる」方式と言われてきた。独W7-Xが性能を証明した一方、そのねじれた3D成形コイルは製造の悪夢でもある。米Thea Energyの答えはシンプルだ——コイルを全部平らにして、複雑さはソフトウェアに引き受けさせる。プリンストンプラズマ物理研究所(PPPL)発の同社は、2026年5月に出光興産も参加するシリーズB 1億ドルを調達し、7月にはARPA-Eから磁石量産に2,000万ドルを獲得。DOEマイルストーン・プログラム8社のなかで最初に発電プラント前概念設計の認証を得た、いま最も勢いのあるステラレータ企業である。

会社概要:PPPLのステラレータ研究を丸ごとスピンアウト

Thea Energyは2022年、PPPL・プリンストン大学の技術をもとに設立された。CEOのブライアン・バーズィン氏はGeneral Fusion元戦略担当VP、共同創業者のデビッド・ゲイツCTOはPPPLでステラレータ物理を約25年率いた研究者だ。本社はニュージャージー州カーニーで、2025年1月には磁石製造のスケールアップを見据えたラボ併設の新本社を開設。2023年5月には米エネルギー省(DOE)のマイルストーン型核融合開発プログラムに採択された8社の一角に入った(米国の核融合投資の文脈)。

技術:平面コイル・ステラレータ——複雑さをハードからソフトへ

ステラレータは外部コイルだけでプラズマを閉じ込めるため、トカマクのような電流駆動が不要で定常運転に向く。問題はそのコイルで、W7-Xでは一品物の3D成形コイルをミリ単位の精度で製造・設置する必要があり、工期とコストの主因になった。Theaの「平面コイル・ステラレータ」は、このねじれたコイルを、量産可能な平らな高温超電導(HTS)磁石の配列に置き換える。個々の磁石はシンプルに保ち、磁場のねじれは多数のコイルへの通電をソフトウェアで動的に制御してつくり出す仕組みだ。

発電プラント設計では、磁場の骨格を担う大型磁石12基(型は4種類のみ)と、磁場を微調整する300基超の小型シェーピングコイルで構成する。設計改良で当初案からコイル数を約半減させ、シェーピングコイルは1サイズに統一——自動車部品のようにラインで量産できる形に落とし込んだ。同社は450以上の独立変数で磁場を運転中も再最適化でき、製造誤差や経年変化への許容度が従来型ステラレータより桁違いに大きいと説明する。磁石をプラズマから離して置く準対称設計により、D-T炉に必須のブランケット(解説)の空間を確保し、磁石寿命30年超を狙う点も実用志向だ。

実証の積み上げ:Canisアレイからフルスケールコイル、デジタルツインまで

2025年3月、同社はHTS平面コイル9基を3×3に並べた試作アレイ「Canis」で磁場成形の性能と制御性を実証し、結果はIEEE系論文として公表された。2026年5月にはフルスケールの平面シェーピングコイルの稼働に成功。さらに6月には、NVIDIA・Synopsys・アルゴンヌ国立研究所・PPPLと組み、商用炉HeliosのデジタルツインとAIサロゲートモデルを開発する協業を発表した。「ハードは単純に、複雑さは計算で」という同社の思想が、設計・運転の全工程に一貫している。

ロードマップ:中性子源「Eos」から商用炉「Helios」へ

最初の統合装置Eosは、重水素-重水素(D-D)反応の中性子源ステラレータだ。第1段階でステラレータとして世界最高水準の三重積10²¹ keV·s/m³を目指し(コイル最大磁場は約16テスラ)、第2段階では長期運転により発電炉技術のデリスクと放射性同位体(RI)製造を行う。発電前に中性子をビジネスにする点はSHINEとも通じる現実路線だ。その先の商用炉Helios(D-T)については2025年12月に前概念設計を公表し、2026年1月13日、DOEマイルストーン・プログラムの8社で最初に設計審査の認証を取得した。

資金:累計私募約1.3億ドル——出光興産が日本から参加

資金調達は、2024年2月のシリーズA 2,000万ドル(Prelude Venturesリード、日立ベンチャーズ、Lowercarbon Capital、Anglo American等が参加)を経て、2026年5月にシリーズB 1億ドル(超過応募)をクローズ。リードはトーマス・タル氏創設のU.S. Innovative Technology Fund(USIT)で、日本からは出光興産が同社初の核融合投資として参加した。累計私募調達は約1.3億ドル。さらに2026年7月27日にはARPA-EのSCALEUPプログラムから2,000万ドルを獲得し、ニュージャージーの磁石製造ラインを拡張する。調達資金で人員も倍増させる計画だ(今週の核融合 7月30日号)。

視点:ステラレータ商用化レースの「製造性」枠

ステラレータ勢では、W7-X直系の最適化設計で欧州最大の調達を果たしたProxima Fusion、既存インフラ活用を掲げるType One Energyが先を行くが、Theaの差別化は一点集中だ——ステラレータ最大の弱点である「コイルの製造性」を、方式そのものを組み替えて解消する。ARPA-Eが出資したのも物理ではなく磁石量産である事実は、同社の勝負どころがどこかを端的に示す。平面コイルの磁場品質がW7-X級の閉じ込めを本当に実現できるかはEosでの実証待ちだが、「磁石が量産部品になったステラレータ」が成立すれば、コスト曲線は他方式を含めた業界全体の前提を書き換える可能性がある。

出典: Thea Energy公式サイト・プレスリリース(thea.energy、2024〜2026年)、GlobeNewswire(シリーズA 2024/2/8・シリーズB 2026/5/27・ARPA-E 2026/7/27)、TechCrunch(2026/5/27、2026/7/27ほか)、arXiv「Prototyping and Test of the "Canis" HTS Planar Coil Array」(2025/3)、PR TIMES(出光興産、2026/5/28)、POWER Magazine(2026/2/9)をもとに編集部作成。数値は各出典に記載の値。

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