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Research 2026/07/17

FIAレポート2026を読む——年間44.8億ドルの先にある「商業化の足場」

Fusion Industry Association(FIA)は7月13日、第6回の年次レポート「The Global Fusion Industry in 2026」を公開した。年間調達額44.8億ドルという見出しの数字の裏で、立地協定・電力購入契約(PPA)・株式市場入りという「商業化の足場」が初めて形になりつつある。本稿ではレポートの要点を数字で整理し、日本勢の位置づけまで読み解く。

調達額:年間44.8億ドルは前年比69%増、累計142.4億ドルに

2026年7月までの12カ月間に、調査対象56社が計44.8億ドルを調達した。調査開始(2021年)以来の年間最高額で、前年比69%増。累計は142.4億ドルと、5年で約7倍に膨らんだ。業界の雇用も16,000人を超えている。

牽引したのは大型ラウンドだ。レポートが挙げるのは、Commonwealth Fusion Systems(CFS)のシリーズB2(8.63億ドル、2025年8月)、Inertia EnterprisesのシリーズA(4.5億ドル、2026年2月)、Helion Energy(4.65億ドル、2026年6月)、Proxima Fusion(5.18億ドル、2026年7月)など。今年から、上場準備に伴う新規投資も初めて集計対象になった。TAE TechnologiesとGeneral Fusionの2社がNASDAQ入りを進めており、General Fusionは7月13日に上場を果たしている(今週の核融合 7月17日号参照)。

商業化の足場:立地協定6社、PPA5社

今年のレポートの最大の変化は、資金ではなく「売り先」の可視化だ。初めて調査項目に加わった立地・販売契約の項目では、立地協定を締結済みの企業が6社(さらに4社が候補地を評価中)、PPA・オフテイク等の商業的コミットを持つ企業が5社(さらに2社が交渉中)と報告された。

この流れを加速しているのがAIの電力需要だ。2023年のMicrosoft×Helionを皮切りに、2025年6月にはGoogleがCFSと契約。買い手が先に並ぶことで市場リスクが下がり、資金調達がさらに容易になる——という好循環が生まれつつある。FIAのAndrew Holland CEOも「立地協定とPPAの存在は、商用核融合が視野に入ったことの証左」とコメントしている。

方式と地域:磁場閉じ込め48%、米国28社・日本3社

技術方式は磁場閉じ込めが48%と最多で、慣性閉じ込め21%、磁気慣性14%と続く。地域分布では米国が28社と圧倒的で、10億ドル超を調達した5社はすべて米国企業。英国・ドイツ・中国が各4社、インド・フランス・日本が各3社で続く。調査対象は2021年の23社から56社まで増え、今年も6社が新規参入した(3社が撤退)。

日本から調査対象に入る3社は、国内エコシステムの中核である京都フュージョニアリング、Helical Fusion、EX-Fusionとみられる。海外比較での日本勢の構造的な立ち位置は日本の核融合スタートアップ最前線で詳しく整理している。

課題:それでも「資金」が最大、材料と効率が続く

記録的な調達の一方、短期の最大課題として67%の企業が依然として資金調達を挙げた(前年は84%で、切迫感はやや緩和)。発電効率(64%)、耐中性子材料(64%)が続く。長期では耐中性子材料(57%)がトップになり、発電効率(52%)、トリチウム自給(52%)と、工学課題が前面に出てくる。

商用化に必要な追加資金の見積もりは1億〜109億ドルと企業間の幅が大きく、平均は27億ドル(前年26億ドル)。累計142億ドルという業界全体の調達額も、1社あたりで見れば「発電所を建てるにはまだ一桁足りない」水準であり、公的支援と資本市場の両輪が引き続き必要になる。材料課題の中身はブランケットダイバータの各記事を参照。

タイムライン:71%が「2030年代に商用発電」を維持

楽観論の後退はない。71%の企業が2030年代の商用発電開始を見込むという回答は昨年から変わらず、業界の中心シナリオであり続けている。ただしFIA自身が注記するとおり、本調査は各社の自己申告に基づくスナップショットであり、マイルストーンの実績とは区別して読む必要がある。

編集部の視点

5年前、このレポートの主役は「いくら集めたか」だった。2026年版の主役は明らかに「誰に売るか」に移っている。立地協定6社・PPA5社という数字はまだ小さいが、需要側(ビッグテック・ユーティリティ)が出資者としても登場し始めたことで、核融合は初めて「顧客のいる産業」の輪郭を持った。一方で、耐中性子材料とトリチウム自給という工学課題は資金では即座に解けない。次の5年で問われるのは、調達ランキングではなく、マイルストーンの達成率だろう。

出典: Fusion Industry Association「The Global Fusion Industry in 2026」およびFIAプレスリリース(2026/7/13)をもとに編集部作成。数値は同レポート記載の値。

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