Research 2026/07/17
日本の核融合資金調達アップデート2026——「億」から「十億」の壁を越え始めた日本勢
世界の核融合業界が年間44.8億ドルという記録的な資金を集めるなか(FIAレポート2026)、日本勢も着実にラウンドを重ねている。2025年後半から2026年前半にかけての国内の主な調達を、炉本体・エンジニアリング・サプライチェーンの3層で総整理する。
炉本体:Helical Fusionが国内炉開発で最大級の調達へ
ヘリカル方式のHelical Fusionは、2025年12月のシリーズAエクステンション(8.7億円)に続き、2026年春にはシリーズB 27億円と東京都の補助金10億円をあわせた37億円の調達が報じられた。シリーズA(23億円)からの既知の調達を積み上げると累計は約70億円規模となり、国内の炉開発スタートアップでは最大級だ。資金は統合実証装置「Helix HARUKA」から発電初号機「Helix KANATA」へ進む「Helix Program」に投じられる。7月には海外専門メディアも同社の商用炉建設に向けた進展を取り上げた(今週の核融合 7月17日号)。
レーザー方式のEX-Fusionは、2025年6月にシリーズA 約26億円(第三者割当23億円+融資3億円)を完了し累計56億円に到達。同年10月にはJX金属・パーソルベンチャーパートナーズ・SBI新生企業投資を引受先とするエクステンション4億円を追加した。目標は2027年度の「1時間連続中性子発生」実証で、浜松の実証研究施設で連続運転技術の統合を進める。先進燃料(p-¹¹B)のLINEAイノベーションも2025年6月にANRIらからシリーズA 17.5億円を調達済みだ。
エンジニアリング:京都フュージョニアリングは累計162億円に
炉方式に賭けず「プラントの心臓部」を担う京都フュージョニアリングは、2025年9月に67.5億円の調達が報じられ、シリーズC関連ラウンドには京セラ系ファンド・JERA・三井住友信託銀行などが参画。累計調達額は162億円(2026年1月時点)と、国内核融合スタートアップで頭一つ抜けた存在であり続けている。カナダ原子力研究所との合弁Fusion Fuel Cyclesによる燃料サイクル試験施設「UNITY-2」など、実証インフラへの投資が続く。詳細は京都フュージョニアリング 徹底解説を参照。
サプライチェーン:MiRESSOの42.3億円が示す「材料」への資金流入
2026年前半で特筆すべきは、炉をつくる企業ではなく素材企業への大型出資だ。中性子増倍材ベリリウムの低温精製を手がけるMiRESSO(青森県)は2026年2月、Spiral CapitalとSBIインベストメントを共同リードとするシリーズA 42.3億円をクローズし、補助金を含む累計は約66.8億円となった。約300℃・常圧でのベリリウム精製というコスト優位を武器に、パイロットプラント「BETA」の本格生産立ち上げを狙う。
また、中性粒子ビーム入射(NBI)装置のビームフォーフュージョン(岐阜県)が2026年3月にインキュベイトファンドから5,000万円のシードを調達。材料・中性子損傷やサプライチェーンの記事で整理したとおり、「炉の外側」を担う日本企業への投資が広がりつつある。
世界との距離感——1社の1ラウンドに日本全体が届かない
好調に見える日本勢だが、規模の差は依然大きい。独Proxima Fusionが7月に決めた1ラウンド(4.11億ユーロ≒約700億円)は、ここに挙げた日本勢の調達を全て合計しても届かない。FIAの2026年調査で日本から対象となったのは3社にとどまり、10億ドル超を調達した5社はすべて米国企業だ。一方で、AIデータセンターの電力需要を背景に需要家が出資者化する世界的な構図(Google→CFS・Proxima、Microsoft→Helion)は、JERAや関西電力・J-POWERの出資という形で日本にも既に現れている。
編集部の視点
2026年前半の国内調達を並べると、「炉本体」「エンジニアリング」「材料・装置」の3層すべてに資金が入り始めたことがわかる。特にMiRESSOの42.3億円は、発電の成否に先行して収益化しうるサプライチェーン企業に国内VCが本格的に張り始めたシグナルだ。次の注目は、Helical Fusionが報じられた資金でHelix Programをどこまで前進させるか、そしてEX-Fusionの2027年度・連続中性子実証である。日本勢の勝ち筋は「巨額調達の追随」ではなく、実証マイルストーンと産業基盤の着実な積み上げにある。
出典: KEPPLE「核融合技術で未来を変えるスタートアップ6選」(2026/5/29)、KEPPLE各社調達記事(2025/6/5ほか)、東洋経済オンライン「4月に資金調達したスタートアップTOP20」(2026年)、日本経済新聞(2025/9)、Fusion Industry Association「The Global Fusion Industry in 2026」(2026/7/13)、各社発表をもとに編集部作成。数値は各出典に記載の値。