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技術解説

技術解説 2026/07/27

REBCO高温超伝導テープ徹底解説——核融合を支える素材と供給網

強い磁場でプラズマを閉じ込める核融合炉にとって、磁石は装置の大きさと性能を左右する中核部品だ。その磁石を従来より高い磁場で使えるようにした材料が、REBCO(レブコ)高温超伝導テープである。本稿では、薄いテープが大電流を運ぶ仕組み、量産の難所、主要メーカー、日本企業の事業機会までを整理する。

REBCOとは何か——薄膜を重ねた「線材」

REBCOは、Rare Earth(希土類元素)、Barium(バリウム)、Copper(銅)、Oxygen(酸素)からなる酸化物超伝導体の総称だ。実際の製品は丸い電線ではなく、幅数ミリから十数ミリの薄いテープとして供給される。フジクラの公開資料では、ハステロイなどの金属基板、結晶の向きを整えるバッファ層、REBCO超伝導層、銀の保護層、銅の安定化層などを積み重ねた構造が示されている。

超伝導状態で流せる上限電流は臨界電流(Ic)と呼ばれ、温度、磁場の強さ、磁場がテープへ当たる角度によって変わる。したがってメーカー比較では、「REBCOである」という材料名だけでなく、想定温度・磁場・角度での性能、長手方向の均一性、機械強度、接合性まで確認する必要がある。

なぜ核融合がREBCOを必要とするのか

トカマクや一部のステラレータでは、磁場を強くすることで高温プラズマをより小さな空間へ閉じ込めやすくなる。従来の低温超伝導磁石より高い磁場で使えるREBCOは、装置の小型化を狙う民間核融合企業の設計を支えている。高温超伝導全体の位置づけは、入門記事「高温超電導(HTS)とは」でも解説している。

Commonwealth Fusion Systems(CFS)とMITは2021年、大口径の試験磁石で20テスラを超える磁場を実証した。これはREBCOを大型核融合磁石へ統合できることを示した重要な工学実証である。ただし、線材単体の性能と、コイル、冷却、構造材、電源、保護回路を組み合わせた磁石システムの成立は別の課題だ。「高性能なテープを買えば炉が完成する」わけではない。

製造の難所——結晶配向と長尺の均一性

REBCO層は結晶の向きが乱れると電流性能が落ちるため、長い金属テープの上へ均一な結晶配向をつくる必要がある。フジクラはIBAD(イオンビームアシスト蒸着)で配向した中間層を形成し、PLD(パルスレーザー蒸着)で超伝導層を成膜する技術を展開する。古河電工傘下のSuperPowerは、IBADで形成したバッファ層の上へMOCVD(有機金属化学気相成長)でREBCO層を成長させる。

量産では、短い試料で最高性能を出すことより、長尺全体の品質をそろえ、検査し、用途に応じた銅厚や幅へ加工することが重要になる。SuperPowerの製品仕様は、複数のテープ幅、基板厚、銅安定化層、絶縁などの選択肢を示している。顧客側は臨界電流だけでなく、曲げ、引張、接合、絶縁、トレーサビリティを含む「使える線材」として評価する。

主要メーカーと日本の位置

日本には、REBCO線材を自社開発するフジクラ、米国子会社SuperPowerを持つ古河電気工業、神奈川県でHTSテープを製造するFaraday Factory Japanがある。フジクラはIBADとPLD、SuperPowerはIBADとMOCVD、Faraday Factory JapanはIBADとPLDを軸に、それぞれ製品を展開している。製法が同じ分類でも、材料組成、人工ピン、安定化層、検査、加工条件によって製品特性は異なる。

海外では、Shanghai Superconductor Technology、THEVA、MetOxなどもREBCO線材を開発・供給する。重要なのは、公開情報だけで世界シェアや優劣を断定しないことだ。用途ごとに必要な磁場、温度、長さ、納期、認証が異なり、顧客との契約数量や歩留まりは非公表の場合が多い。

具体的な商流の一例として、Tokamak Energyは2023年、古河電工とSuperPowerから次期装置向けに数百km規模のHTSテープ供給を受ける契約を発表した。こうした案件では、単発の線材販売だけでなく、長期の品質保証、増産計画、磁石設計との共同最適化が競争力になる。

供給網で見るべき5つのボトルネック

第一は長尺の均一性、第二は高磁場・低温での実使用性能、第三は巻線や電磁力に耐える機械信頼性、第四は局所的な常伝導化を検知して磁石を守るクエンチ保護、第五は需要増へ対応する生産能力と品質保証である。テープ形状は高磁場に強い一方、電流や磁場の方向に対する異方性、接合、遮蔽電流、交流損失など、磁石設計側で扱うべき特性も持つ。

Fusion Industry Association(FIA)の2024年サプライチェーン調査は、HTS線材を将来の供給リスクが懸念される品目の一つに挙げた。2026年版では、回答企業全体のサプライチェーン支出が2025年に24%増え、供給企業の75%が核融合向け能力へ投資したと報告している。ただし、これは核融合供給網全体の調査であり、REBCOだけの市場規模や成長率を示す数字ではない。

核融合以外にも広がる事業機会

REBCOの需要先は核融合だけではない。高磁場NMR・MRI、粒子加速器、送電ケーブル、限流器、モーター、発電機、電動航空機などが候補になる。複数市場へ供給できれば、核融合計画の遅延に左右されにくい事業基盤を築ける一方、用途ごとに必要な温度、交流損失、形状、認証は異なる。

投資家や事業会社が見るべきなのは、派手な「最高磁場」だけではない。顧客が求める条件での再現性、長尺歩留まり、検査能力、増産に必要な装置と人材、原材料調達、磁石メーカーとの共同開発、核融合以外の売上先を確認すべきだ。REBCOは核融合炉そのものではないが、複数の炉開発企業を横断して価値を持つ、数少ない共通基盤の一つである。

一次情報: CFS「HTS magnets」MIT PSFC「High field magnets」フジクラ「Reasons to choose Fujikura」フジクラ「Next-generation Energy」SuperPower「2G HTS Wire Specification」Faraday Factory Japan 会社概要Tokamak Energy・古河電工グループの2023年発表FIA Supply Chain Report 2024FIA Supply Chain Report 2026をもとに編集部作成。各社の生産能力、価格、契約条件は公開範囲が限られるため、非公表情報を推定していない。

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