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技術解説

技術解説 2026/07/30

FRC(磁場反転配位)とは——Helion・TAEが賭ける「プラズマ自身が磁場をつくる」方式

トカマクやステラレータが巨大な外部コイルで磁場の「カゴ」を用意するのに対し、FRC(Field-Reversed Configuration=磁場反転配位)はプラズマ自身に電流を流させ、自分で自分を閉じ込める磁場をつくらせる。装置は筒型でシンプル、磁場の利用効率は全方式で最高クラス。MicrosoftへのPPAで知られるHelionが採用し、TAEが30年追い続け、中国の第2世代スタートアップも相次いで参入する「軽量級の本命」を解説する。

原理:磁力線が「反転」した自己完結プラズマ

FRCは、円筒装置の外部ソレノイドがつくる磁場の内側に、プラズマ中の周回電流が逆向きの磁場を重ねることで成立する。中心軸付近では合成磁場の向きが外部磁場と逆転(反転)し、磁力線が閉じたドーナツ状の領域——ただしトカマクと違い中心を貫くコイルも容器もない——が生まれる。プラズマの塊(プラズモイド)が磁場の繭に包まれて浮かんでいる状態に近い。装置に必要なのは直線状の筒と比較的単純なコイルだけで、トカマクの複雑なトロイダル磁場コイル群(トカマクとは)が要らない。

強み:ベータ値がほぼ1——磁場を無駄なく使う

閉じ込め方式の効率は、磁場の圧力に対してどれだけのプラズマ圧力を支えられるかを示すベータ値で測られる。トカマクが数%にとどまるのに対し、FRCは原理的にベータ値が1(100%)近くまで達する。同じ強さの磁石でずっと高密度のプラズマを保持できるということで、装置の小型化・低コスト化に直結する。また構造が直線的なため、燃料の入替えや排熱・排気の設計がしやすく、D-³Heやp-¹¹Bといった先進燃料で必要になる高温運転とも相性が良いとされる。HelionがD-³He、TAEがp-¹¹Bという「難しい燃料」をあえて狙えるのは、この高ベータという土台があるからだ。

弱み:寿命はミリ秒——「保つ」より「回す」へ

FRCの歴史的な課題は閉じ込め時間の短さだ。プラズモイドは不安定化しやすく、無対策では数百マイクロ秒〜ミリ秒で崩れる。この弱点への回答が各社の個性になっている。TAEは中性粒子ビームを撃ち込んでプラズマを回転・安定化させ、閉じ込め時間を稼ぐ「定常維持」路線。一方Helionは発想を変え、保てないなら繰り返せばいいと割り切った。2つのプラズモイドを両端から加速して正面衝突・圧縮し、核融合させて回収する動作をパルスで繰り返す。エンジンのように「点火→膨張→再装填」を回す設計で、圧縮されたプラズマが押し返す磁場変化から直接電気を取り出す(タービン不要の直接発電)ことまで狙う。

採用企業:米国の2強と、増殖する中国勢

米国ではHelion Energyが第7世代機Polarisで民間初のD-T運転と1.5億度を達成し(7月30日号)、2028年の商用機Orion稼働を目指す。TAE Technologiesは累計15億ドル超を調達した最古参で、水素-ホウ素(p-¹¹B)の無中性子核融合を最終目標に掲げる。近年は中国で採用が急増しており、成都の瀚海聚能(直線型FRC・初号機HHMAX-901がファーストプラズマ達成)、上海の諾瓦聚変(FRC小型モジュール炉・設立1年で12億元調達)、合肥の星能玄光(FRC・磁気ミラー混成のXeonova-1)と、第2世代スタートアップの主力方式になりつつある(中国特集)。装置が小さく初期投資が軽いことが、後発の参入障壁を下げている。

視点:小さく安く、ただし物理は最難関

FRCは「発電所として安く作れる形」から逆算した方式であり、成功すればトカマク型より一桁小さい設備で分散配置できる可能性がある。ただし高ベータ・プラズモイドの安定制御とエネルギー回収は物理・工学とも未踏領域が多く、Q>1(Q値とは)を科学的に実証した装置はまだない。HelionのPolarisとOrionが2020年代のうちに答えを出せるか——FRCの評価は今後2〜3年で大きく動く。

出典: Helion Energy・TAE Technologies公式資料、ANS Nuclear Newswire、米プリンストン大学・ロスアラモス国立研究所のFRC研究文献、当データベース収録の中国各社情報をもとに編集部作成。

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